システム開発の見積りってわかりにくいですよね。高いのか安いのか、相場が分からないし、ITの知識がないと妥当なシステムなのかどうかも分からない。

よくあるパターンを紹介します。

ある会社で、エクセルでやっている管理作業が非効率になってきたのでITシステム導入を検討しているとします。

早速、担当者がシステム開発会社に問い合わせし、必要なシステムの内容や要件等について打ち合わせし、見積りをお願いすると、1周間ぐらい経ってから見積書がメールで送られてきました。

見積書には、例えば「工数: 10人月」「総額: 800万円」と書かれていたとしましょう。

それを見た担当者は、そんなに予算がないので、「高いな〜」ってなって、「もうちょっと安くならないのか」というやり取りが始まる。

そもそも、その「10人月」というのが妥当なのかどうか、素人では判断つきません。

つまり、「高いな〜」という印象も、額面だけを見て何となく言ってるだけであり、根拠がありません。つまり、高いのか安いのか正確には分からないのです。

それって、おかしくないですか?

もう少し、身近な例に置き換えて考えてみましょう。

例えば、クルマを買う時には(単純にステータスとしてクルマを保有している人も居ますが)一般的には、そのクルマがあるとどれだけ生活が楽になるか、通勤や子供の送り迎え、旅行やアウトドアを楽しむ事も考慮し、どんなクルマをいくらで買うべきかと考えます。

もっと分かりやすい例を出すと、乾燥機能付きの全自動洗濯機を買う場合、それがあると毎日の洗濯にかかる時間がどれだけ節約できるかと考えるはずです。

乾燥までやってくれるので、洗濯物を干して取り込むという作業がなくなれば、家族が多い場合は一日あたり30分程度節約できるかも知れません。この30分は子育て世代にはとても大きいです。一年間で換算すると、なんと約180時間になります。

つまり、私たちはお金を使うときに、モノの価値を見て妥当かどうか判断しています。

システム開発だって、同じだと思うのです。

極端な言い方をすれば、「このシステムを導入したら2,000万円のコスト削減になるだろう、導入費用は800万円、よし、それなら導入決定だ!」みたいな事です。

これならITの専門家でなくとも、誰でも簡単にシステムの価値を評価できます。

ところが、現在のIT業界では冒頭で紹介したような「○人月だから○万円」という見積り根拠ばかりです。そのシステムを導入したらどれだけのメリットがあるのか、それを提示してくれるシステム会社なんて見たことがありません。それがこの業界の習慣になってしまっており、もはや誰も疑問に思っていないのだろうと思います。

確かに、システムの価値といっても単純な話ではないので容易にはとらえどころがないし、表現しにくいですし、それを測るモノサシがある訳でもない。

何となくでもいいから、専門家が専門知識を振り絞って、価値を推し測ってもらわないと、素人では絶対に無理です。

でも日本のIT業界ではそれが出来ていない。

これはITベンダーが今までそういった事に取り組んで来なかった、怠慢ではないのかなと私は考えています。

また、システムを発注する側にも同様に、予算の明確な根拠があるべきだと思います。

例えば、何か非効率な業務があるとして、それにいまコストがどれだけかかっていて、それを年間100万円減らすためにシステム導入したい、5年はシステムを使い続けるとしたら、予算は500万円以下に抑えないとダメだ、とか。

例えば、自社商品のネット販売を始めたい、年間で30万円ぐらいの売上目標にしたいので、利益を計算すれば、ITに投資できる予算はいくらか計算してみよう、とか。

本来であればシステム開発会社が、お客様に寄り添って困りごとを解決するために一緒になって考え、そこまで計算をして、お客様に提案すべきだと私は思います。

もちろん、開発会社にとっては、開発に何人月かかるかはとても重要です。

でもそれは開発側の都合であり、お客様には関係ありません。開発会社は努力をして工数を下げれば良いのです。開発工数は、お客様にとっての価値ではないのです。

もっと言うと、先の例で出ましたが、乾燥機能付きの洗濯機が欲しい人は、本当はその機械が欲しいのではなくて、洗濯に多くの時間がかかって困っている人です。

だとすると、解決策は他にもあるかもしれません。

乾燥機だけを追加で買うとか、家事代行サービスを使うとか、家族に手伝ってもらえるようにするとか。

さらにもっと言うと、洗濯の時間がかかって困っていると言うよりも、毎日の家事全般に時間がかかって困っているのかもしれません。または、子供や家族と過ごす時間が足りていなくて困っているのかも知れません。または、洗濯物を干すスペースが足りなくて困っているのかも知れません。

このように、お客様自身も本当の困り事が何なのか、キチンと把握できていない場合もあります。

ネオジニアでは「こんなシステムを作ってくれ」と依頼された場合でも、その通りに作り始めることはありません。まずお客様に詳細にヒアリングする事で、本当の困り事は何なのかを明確にすることから始めます。

その結果、システム開発は必要ないという結論になることもありますが、それがお客様にとって最善の選択なのであれば、そのように提案すべきと考えています。

本当の困り事を明らかにし、あらゆる解決手段の中から最善と思われるものを提案します。そしてそれがITシステム開発なのであれば、その価値を出来るだけ分かりやすく、お客様が適切に判断できるように日々取り組んでいます。